『恋恋蓮歩の演習』(森博嗣)を読了.
タイトルは読めば出てきます. しこさん天才. Vシリーズの中では今んとこ一番. スロースタータというやつですな. (これはただの私的感想. SMシリーズは最初から森ミステリィぶりをがんがん発揮してるけど Vシリーズはここにきてやっと,という印象を受けた.) ビビッと来た箇所が2つ. まずはそれを抜粋. つまり以下はネタバレを多少含む. p.12 独り小舟に乗り,大海をさまよっている.周囲のどこにも逃げ場はない.助けてくれる仲間もいない.そんな状況が孤独だと勘違いしている者が多いようだ.まったく違う.それは孤独とは別ものである. 場所など,どこであっても同じこと.私たちの周囲には,そもそも逃げ場など存在しない環境ばかりだ.デスクから離れることはできない.窓から飛び出すことはできない.夜はベッドから逃げられない.友人たちを裏切ることはできない. むしろ,そういった逃げ場のない設定こそが,人間に「安心」という幻想を見せる条件でさえあるのだ.周囲のどちらへも行ける自由とは,すなわち砂漠の真ん中に取り残された夜のようなもので,つまりそれが,孤独の必要条件でもある. だから,自由と孤独は,切り離せない. 道が一本あれば,行く手は自然にその一つに決まる.選択する機会が失われる.その不自由さに,人は安堵して,歩み続けるだろう.立ち尽くすよりも歩く方が楽だからだ. そして,その歩かされている営みを「意志」だと思い込み,その楽さ加減を,「幸せ」だと錯覚する. 孤独という自由を,人は恐れ, その価値を評価しないよう, 真の意志の存在を忘れるよう,人は努力する. 自分たちを拘束する力を「正しい」と呼んで崇めるのだ. まるで蟻のように. では……, 私はどうだ? いつからだろうか? 私はいつから,こんな自由な人間に成り下がってしまったのだろうか.正しくて安楽な,そして不自由で安心な生き方を放棄してしまった,そのきっかけは何だったのだろう? ときどき考えないわけでもない. 何故なら, それを問うことが自由の証しでもあるからだ. p.17 お急ぎの方には,ここから得られる警句をご紹介しておこう. あなたが急いでも,あなたの人生は短くはならない. p.311-312 人の心とは,少なからずセンチメンタリズムで起動する. しかし,人の行動を決定づけるものは,もっと実質的で,さらに合理的な判断であるはず. 時間をかけた用意周到な計画は,決して感情的な動機のみでは,実行できない.そこにあるのは,冷静で沈着な思考.そして自分と周辺との位置関係を,客観的に評価する目だ.結局,メリットとデメリットのバランスで,人は行動するのである. さらには,ほんの僅かばかりの風が, 誰かを愛するために,自分は生きているのだという, 思い込みの風が, くすぐる程度に吹けば良い. 人はときに,そんな微風で動くものだ. あれ,打ち込んでるうちに3つに増えた(笑) 最初に選んだのは,真ん中以外の2つ. 1つめは打ち込んでいるうちに長くなった. 実感としては既に何となく備わっている内容だが, 「孤独の必要条件」という言葉に惹かれた. いいね. 「境界条件が(紅子と)似ている」という大笛の発言といい, 数学用語はどうしてこうも切れ味がよいのだろう. 理系で良かった,と思う瞬間. 2つめは… まぁ,体よく使ってください的標語かな. 状況に応じて意味が変わる抽象語は美しい. その美しさの光源から放たれるは「未知」という名のスペクトル. 洗練されていない洗練さ…? いや,後者の洗練は違うか… …完全に洗練されようのない高潔さ,でどうだろう☆ 3つめ. 愛はほんのり. 多分そう. 現在当事者でない僕にはぴったり(=しっくり来すぎる)表現. だが, 恋をしても, このサッパリ感(「さっぱり感」ではない)を保てるだろうか. 保たねば,とは別に思わないけれど, 変わるかどうか,そしてどう変わるかにはやっぱり興味がある. 主観の影響力が客観のそれを超える瞬間. 人がふと愕然とするのは,そういう時なんでしょうね. 上の恋の成就例を続けるとして, 「まぁええか」と思えたなら,自分を変え得た彼女の存在と二人の運命を言祝ぐ. 「染まってたまるか」と思えたなら,連綿と続く己の意思の堅固さに満足感を覚える. 恋愛的盲目的主観が継続的慢性か突発的急性か否か. 誰に分かるんだこんな話. 知りたい,とは別に思わな(ry
by chee-choff
| 2009-06-11 00:05
| 読書
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