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深爪エリマキトカゲ
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◆ 菊と「正宗」
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 下は賤民から上は天皇にいたるまで,まことに明確に規定された形で実現された封建時代の日本の階層制度が,近代日本の中にも深い痕跡を残している.封建制度が法的に終わりを告げたのは要するにわずか七十五年前のことにすぎない.そして根強い国民的習性はわずか人間一生にすぎない短い期間内に消えてなくなるものではない. p.90
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『菊と刀』(R.ベネディクト)を読んでいる.

無意識と呼んだりする,「よく分からないが自分をしてそうさせるもの」の姿を捉えようと思うのなら,
自分の来し方を(たとえ全て覚えていたとしても)思い起こすだけでは足りないかもしれない.
「国民的習性」がそれに含まれるかもしれない.

ということで自分自身(というか「人」)の解明のためにも役立つかな,
と興味以上のものを持たせてもいるのだけれど,これがなかなか面白い.
というか,ためになる.
日本人の当たり前がぜんぜん当たり前でない外国人から見た日本人の記述というのは,
当時(本書の「当事者」はだいたい江戸〜戦前・戦後)の日本人からしたら「見当外れだ!」
と斬って捨てられるようなものかもしれないが,現代人にとっては当時の日本人よりむしろ
当時の外国人の目に近いところもあって,「なるほどなあ…」と思うこと頻りである.
また著者が文化人類学者とあって視点の偏りが少なく,読みながら日本史について学んでいるようでもあり,
本書が「日本人の解明」に主眼をおかれているだけに歴史書とは違う(心理学的,か?)面白さがある.

本書の記述に対して別に「耳が痛く」なるわけでないのは
当時の日本の価値観が現代ではほとんど薄れてしまったことの証左でもあるが,
(というのは殆ど嘘で,実際は「てっ,いてててて」なのだけど)
「それは表層であって深層は分からない」という命題を否定するには至らない.
という視点で読むと「こわいなぁ…」と思う所に幾度も遭遇するが,
知らないよりマシだし,読み始めてしまったからには途中で放り出せない.


全然関係ないんだけど,「菊と刀」と聞いて真っ先に「菊正宗」を思い浮かべるのは,
FFやってたせいですねきっと(確かFF6とFFTには出てきたぞ).

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日本人は他のいかなる主権国にもまして,行動が末の末まで,あたかも地図のように精密にあらかじめ規定されており,めいめいの社会的地位が定まっている世界の中で生活するように条件づけられてきた.法と秩序とがそのような世界の中で武力によって維持されていた二百年の間に,日本人はこの綿密に企画された階層制度をただちに安全ならびに保証と同一視することを学んだ.彼らは既知の領域に留まっている限り,既知の義務を履行している限り,彼らの世界を信頼することができた
(…)
人はこの「地図」を信頼した.そしてその「地図」に示されている道をたどる時にのみ安全であった.人はそれを改め,あるいはそれに反抗することにおいてではなくして,それに従うことにおいて勇気を示し,高潔さを示した. p.91
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ててて.
by chee-choff | 2011-05-08 22:13 | 読書